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清華大学・復旦大学

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『清華大学竹簡と先秦思想史研究』

湯浅邦弘
中国研究集刊 玉号(総五十号)平成二十二年一月 二八〇―二八八頁


「あなた方が世界初の参観者です」。

二〇〇九年九月一日、我々は、外国人研究者として世界で初めて清華大学蔵戦国竹簡を実見した。

清華簡の発見と整理

時は、二〇〇八年の夏にさかのぼる。北京オリンピックの開催を目前としていた中国で、一つの事件が起こった。七月十五日、古物商が入手していた大量の竹簡を、清華大学の卒業生である実業家が購入し、母校に寄贈した。「清華簡」と略称された竹簡群は、第一次調査の結果、二千余枚からなる戦国時代の竹簡であることが判明する。近年公開され世界の注目を集めている竹簡の内、郭店楚墓竹簡(郭店楚簡)が約七〇〇枚、上海博物館蔵戦国楚竹書(上博楚簡)が一二〇〇枚。清華簡の分量はそれらをはるかにしのぐ。

竹簡の一部はカビが生えるなど劣化が見られたため、清華大学では、ただちに専門の工作室を設けて洗浄と保護にあたった。オリンピックで世界が沸きかえる中、研究員は休日返上で作業に没頭した。

この作業が一段落した十月十四日、清華大学主催の竹簡鑑定会が行われ、中国国内の十一名の研究者が招かれた。古文字学研究の権威である裘錫圭氏をはじめ、出土文献研究に実績のある研究者たちが参加した。鑑定の結果、これらが間違いなく戦国時代の竹簡であるとの評価を得た。この段階で清華大学は、清華簡の概要をメディアに公表し、大きな反響を呼んだ。特に、『尚書』に該当するのではないかと推測される文献があること、『竹書紀年』に類似した編年体の史書があることなどが注目された。

その後、清華大学では、清華簡の撮影作業に着手。その過程で、竹簡の総数が二三八八枚(残簡を含む)であることも確認された。

十二月、清華大学の委託により、北京大学でC14年代測定が行われた。その結果、清華簡の年代が紀元前三〇五年±三〇年であることが判明し、先の鑑定結果を裏づけた。清華簡も、郭店楚簡や上博楚簡と同じく、戦国時代中期の竹簡であることが科学的に証明されたのである。

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